2089

The future 80 years later

[2089年7月2日 Sat]<14>


ダニーは時々振り返った。涼子は倒れたままだ。怪我をしたのかもしれない。だが介抱している余裕はなかった。時折ファルコンから銃弾を浴びせられた。防弾仕様の厚い鉄板でももたない。時間の問題だと焦ったが、どうすればいいのか、逃げ切れそうにない。今までも危ない場面はあったが、きょうは最高に最悪だ。しかし容赦がないと思った。プロの殺し屋に手加減はない。

ファルコンがさらにスピードを上げて、狭い路上で並走した。時速150キロ。思いっきり左にハンドルを切って激しくすり寄ってくる。2台の車の間から火花が散る。レースをしているような錯覚に襲われたが、並走しながらファルコンは左ウインドウを下げた。笑いを浮かべた男が右手で自分の首を切った。<殺す>という意味らしい。
そのときだった。30m程の前方の信号が赤に変わり、左方向から10トントラックがゆっくりと塞ぐように交差点に進入した。

右側を走るファルコンは避けきれず、トラックの後部に勢いよく衝突した。
ファルコンのボンネットが飛んだ。
むき出しになったエンジンルームから透明のガスが噴出し引火した。
小さな核爆発のような閃光が走る。1000℃以上の熱線がビルのモルタルの表面を溶かし、窓ガラスを粉々に破壊した。そして爆風がすべてを吹き飛ばした。昼のような明るさが数秒の間に収束すると交差点のあらゆるものが火に包まれた。ファルコンは大爆発とともに原型をとどめることなく破片と化し飛び散る。水素の激しい燃焼反応は、キノコ雲を暗闇の空へと運んだ。

「ざまぁ〜みやがれ」
スキンヘッドが頬をひきつらせて笑った。
「ダニー、まだ装甲車のような強敵がいる。どうする?警察もすぐ集まってくる」
ダニーは決断ができなかった。

後ろから声が聞こえた。
「ダニー、調布インターから高速に入りなさい」
ダニーが振り返ると涼子が起き上がり見ていた。
「高速にのりなさい」
同じ言葉を繰り返した。
「涼子、大丈夫か?」
「大丈夫!」
「高速は通行止めだ」
スキンヘッドが後を継いで言った。
「入口ゲートには20センチの太い鉄柱が50センチ間隔で鋭角に槍のようにセットされている。飛び越えない限り突破できない。それに巨大な警備ロボットが道路を塞いでる」
「わかってるわ。大丈夫、行きなさい」
確信に満ちた言葉に揺るぎがない。
「勝算があるのか?」
「勝算?わたしはこれ以上誰も傷つけたくないだけよ!」
強い口調で言った。

同じ涼子でないような気がした。落ち着き、反論できない自信が見られた。
信じられないが、1時間程前、新宿で会った涼子が短時間のうちに別人のように人格が変化したというのだろうか?そんなことが有り得るだろうか?有り得ない!
ダニーは自分の心のなかに静かな変化が起きていることに、まだ気づかないでいた。
「高速に入ればもう逃げ場はない」
スキンヘッドが腹立たしそうに言った。


調布駅から南500mの交差点で大爆発があったことをセンター無線は告げた。
凄まじい惨状だ。許せないと沢村は思った。
上石原、下石原、調布ヶ丘のすべての道路を封鎖した。袋のネズミとはこのことだ。もうどこにも逃げられない。調布一帯に集結している警察車両は60台を越えている。

センターからのホットラインが不可解なことを告げた。
「中隊長!スカイポリスが高速の調布ゲートを開けろと指示してきています」
「指示?」
「はいッ。強いコマンドと解釈しました。なぜか理解に苦しむところです」
「幸い通行止めだ。一般車はいない。追い込んで挟み撃ちという作戦だな。でもおかしくないか?」
「なぜなんでしょう?要求しないのにコマンドを出すとは、こんなことは今まで一度もありません」

作戦としては合理的だ。逃げ場がないところに追い詰めれば犠牲も最小限にできる。しかしどこかに腑に落ちないものを感じた。それが何なのか、はっきりとはわからなかった。




ABBA<5>S.O.S



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COMMENT

この記事へのコメント

はじめまして。

コメントありがとう。
実はプロットが拙くて、ストーリーが展開しないのです。
それにテーマが大き過ぎたかしら、大、大長編にならないと収まりがつかないような気がするのですね。
やっぱり、ある程度ストーリーを組み立ててから書くべきでした。
初めての挑戦だったのでどうなるか、自信が持てません。
また、お出で下さい。

はじめまして

はじめまして
ヴァッキーノっていいます。
おもしろい展開ですね。
ひととおり読ませていただきました。
次どうなるか、気になるので、どんどんお願いします!
未来の道具や、お膳立てがうまいですよね。
ボクは2069年を舞台にお話を書いてます。
ここはそのちょうど20年後ってわけです。
2069年に生まれた子供が二十歳を迎える世界!
すごいなあ。
また、ちょくちょく覗かせてもらいます!

hiroさんだけだわ。

でも、創造的言葉が浮かばないの。
今ひとつ集中できないって言うか、浮世の雑事と仕事のことで頭がいっぱい。
好きなロックも最近聴いてないしv-431

NEXT

続きが気になる展開・・・
追い込まれたら普通、最悪の事態・・・
でも、気になる・・・
ワクワク♪
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